山の知識UP

5分間でわかる地図を正しい向きに持つこと

地図を正しい向きに持つことは、地図読みの基本中の基本であるといわれています。コンパスの赤い磁針が示す北(磁北を示す)と地図上の磁北とが一致するように地図を持つこと、これが重要だということです。

地図を正しい向きに持つことの操作は極めて簡単です。一方で、このことについての統一的なテクニカルターム(技術用語)が定まっていないようにも思われます。

そこでちょっとだけ今回は、「5分間でわかる地図を正しい向きに持つこと」について述べてみます。

☞ 専門分野に関係する学会、団体がそれぞれ独自の用語を使っている

地図を正しく持つためには、「地図をグルグル回すこと」が必要です。このような一連の操作を、国土地理院では「地図を標定する」、「地図の方位を標定する」あるいは「地図を整置する」としています(質問に対する国土地理院からの返信メールによる)。また、日本地図学会、日本オリエンテーリング協会や日本山岳会では同じ操作について「地図を整置する」としています。一方、コンパスの輸入代理店による取扱い説明書では「正置」という技術用語を用い、日本勤労者山岳連盟でも「ハイキングABC」等において「正置」という用語を使っています。それでは登山関係雑誌等はどうかというと、「正置」または「整置」のいずれかであり、用語は編集者または執筆者の考え方に基づいて使用しているようにも見受けられます。

しかし、「標定」、「整置」、「正置」のいずれであっても、どれも同じことを指しているのです。ちなみに、これらの技術用語はいずれも「地図学用語辞典,日本国際地図学会(1998)」には載っていません。今日まで、それぞれの専門分野において別々の技術用語が使われているのには、さまざまな理由・背景があるものと考えます。しかし、ここでは馴染みのある「正置」という技術用語を用いて以下に説明します。

 

☞ コンパスを利用する正置の仕方

コンパスの赤い磁針が示す北と地図上の磁北とが一致するように地図を持つことが、「正置」です。そのために、地図をグルグル回しながら、セットすることになります。カーナビをイメージしてください。地図読みは山歩きのナビゲーションです。手順は次のとおりです。

①先ず図1に示すように、あらかじめ地図に磁北線を引きます(赤実線)。

②ここでは、山歩きをしていると仮定します。図1に示す三差路のある現在地まで進んできました(黒色点線)。そこで、ポケットから取り出した地図をグルグル回し、磁北線の北方向(赤実線矢印)がコンパスの赤い磁針と同じ方向を向く(磁北線と平行にする)ようにセットします。これが「正置」です。地図と現在地周囲の地形とが一致していることがわかります。ピークAを目指すコース(緑色点線矢印方向)も確認できるようになります。                               (記 佐藤拓夫)